*親と子のワークショップ[ほんとうの“楽しさ”、みつけよう! オブジェ作家・茅木さんといっしょに人形をつくる。]第1回(2017年8月23日開催)から
1
みんなそうなんだけど、子どもの時っていうのは、
無意識で浮かんできたものをつくったり描いたりする。
それが学校で、図工の時間で『うまい』『へた』となると、
うまい人はいいんだけど、『あいつはへただな』と言われて、それを引きずる。
大人になっても、『自分はそういうことは苦手』とか、
自分で壁をつくってしまう。
その壁は実は壁でもなくて、自分で自分を遮断してしまっている。
その壁を自分で破っていくこと。
きっかけは何人かで、グループで何かをつくったりすること。
それによって、『うまい』『へた』ではなく、
もっと感性でそのモノを見ていけば、
へたなように見えても味わいがあるとか、
言葉で言えない『何か惹きつけられるね』という言葉が返ってくる。
そうすれば、ほんのちょっとしたことで自信につながるんじゃないかな。
その人に子どもがいたら、
子どもの絵やつくったものに対して見方も変わってくると思う。
それが一番大事なこと。
最初は、他人に見せるために絵を描いたりモノをつくったりしているわけじゃない。
自分のために、『自分が気持ちいい』とか、
『自分の中にどんな世界があるんだろう』とか、
そこから出発することが大切。
『これを描いたらつくったら、見た人がどう思うか』と考えると、
『うまい』『へた』になってしまう。
『うまい』『へた』は自分が描きたいつくりたいというところではないんだよね。
2
平面は鉛筆で紙に線や形を描いたり色をつけたり、
それでひとつの世界ができるけれど、
立体の場合はそれだけでなくて、物理的な要素がある。
形というのは、
形だけでなく、重さとか固さに付随する安定感もある。
絵の場合は1枚の紙だけれど、立体の場合は1枚の紙ではない。
不定形になるし、安定性も……。
1枚の新聞紙を縦に置いたら置けないでしょ。倒れるでしょ。
でも、それをぐちゃぐちゃと丸めたら、安定して置けるでしょ。
そういうことが立体と絵の違い。
それに、絵の場合は、目の前の平面だけど、
立体の場合は360度、それに上下。
全部の方位で成り立っているから、
ある部分だけが良くても全体のバランスということから考えたら、
絵よりも違った意味で要素がいっぱいある。
結局、光の当て方によって違って見える。
そういうことで、
絵の場合の頭の中で描く内容と立体の場合の頭の中で描く内容っていうのは、
そのへんで微妙に違うんだよね。
(2017年8月17日)
G A L L E R Y
(最近の作品から)
撮影 堀 博
*興味をもたれた方はアトリエ(電話 03-3331-6448)へお問い合わせください
■茅木日出男さんのプロフィール
1948年
千葉県に生まれる
1995年
東京・六本木のギャラリー「サボア・ヴィーブル」にて「記憶の中の動物たち」I
1996年
同「記憶の中の動物たち」II
1997年
フランス・パリの国立自然史博物館にて「サロン・ド・ナチュラルアーティスト パリの日本人アーティスト10人」にセレクト出展
1998年
同「記憶の中の動物たち」III
2001年
同「記憶の中の動物たち」Ⅳ
*その他、ギャラリー工(高円寺)、ギャラリーオリーブ(代官山)、ギャルリーワッツ(南青山)、ギャラリーf分の1(御茶ノ水)、ギャラリーみずのそら(西荻窪)、ギャラリーたかまつ(西荻窪)などで個展を開催