私ども〈NPO法人Education in Ourselves 教育を軸に子どもの成長を考えるフォーラム〉による「発達の遅れ」連続セミナー[わが子の「発達の遅れ」、その改善に取り組む保護者たち]第14回(赤い羽根共同募金重点助成事業 後援:埼玉県、埼玉県教育委員会、埼玉県社会福祉協議会、川口市、川口市教育委員会、川口市社会福祉協議会)を2018年12月22日(土)、川口市のメディアセブンで開催しました。
【概要】
▶︎テーマ「就職までのプロセス(幼児から社会人への成長) みんなが知りたい、「発達の遅れ」を乗り越え社会人になるまで Part2」
▶お話(体験発表) 社会人2年目/21歳男性の母親(Mさん)
▶進行・解説と質疑応答 河野俊一さん(エルベテーク代表/医療法人エルベ理事)
▶12月22日(土) 9:45〜12:30 メディアセブン(川口市川口1-1-1)プレゼンテーションスタジオ&コミュニケーションスタジオ
▶参加者 91名(うち保護者74名、教師4名、教育・福祉関係者6名)
▶参加費 800円
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第14回は、好評だった前回(第13回)を受け、就職に至るまでのプロセスにおいて身につけておきたい(準備しておきたい)大切な力・姿勢とは何かを掘り下げる内容となりました。前回同様、体験発表は一昨年(2017年)春に就職した社会人2年目/21歳男性の母親Mさんです。幼児期から就職を経て現在に至る長期間の成長記録を発表しました。
いま、「発達の遅れ」を抱える子どもの就職について注目が集まっていますが、就職活動時に直面する面接の技術的な練習やビジネスマナーの習得などがいわゆる「就労支援」の具体策としてよく取り上げられます。
しかし、短期間での間に合わせの練習ではやはり場当たり的な対応になってしまうのではないかと思われます。たとえ、就職という壁を突破し、職場で働けるようになったとしても、その後、周囲との折り合いをなかなかつけられず、トラブルで退職する恐れがたぶんにあるように感じられます。
当然、社会人であれば、「発達の遅れ」に関係なく、挨拶や返事、ルールに即した行動、周りとの協力、周りへの経過・結果の連絡・報告、上司からの指示を受けてやり遂げるといった最低限の力がいろいろな局面で求められます。それに応えられるからこそ、安定した社会人生活が送れるのだと思います。
Mさんのメッセージと息子さんの成長から私たちが学ぶべきことはたくさんあるように感じられました。一言で言えば、「成長に合わせて大切なことを準備すること」に尽きるように思われます。
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習慣として身についた基本的な力
今回の体験発表では、最後にMさんが話した感想が印象的でした。現在の療育や特別支援教育の課題が端的に語られていたと思うからです。
幼児期に「中等度〜軽度の知的遅れを伴う発達障害(自閉症)」と診断され、障害者手帳を取得した息子さんの子育てを踏まえ、Mさんは参加者に向かってこう言いました。
「健常の子はいやでも学習する機会がありますが、障害があると『学習よりほかに必要なことがある』と言われ、学習する機会を与えてもらえませんでした」
Mさんによれば、「字が読めても計算ができても、生活はできません。障害児に必要なのは勉強ではありません」とまで言われたそうです。ほんとうは、勉強は生活に直結するはずなのに……。
誤解されがちですが、学習(勉強)とは「してはいけないこと」や「しなければならない」を教えること、つまり、子どもに物事のルールや手順を教えることを含みます。
小学校の普通学級に入学した息子さんはコミュニケーションがうまくとれません。そこで、担任の先生は配慮と思ったのでしょう、何人かの子どもにお世話係を割り当て、息子さんができることまで他の子どもに任せました。そして、担任自身も息子さんを抱っこしたりおんぶしたりという、赤ちゃん扱いの状態でした。
付き添ったMさんは、特別扱いによって息子さんが次第に好き勝手な行動をし始めたことが気になりました。「うちの子を特別扱いしないでほしい」とMさんが要望すると、担任から「私はあなたのお子さんだけを見ているわけではありません」と言われ拒絶されてしまったそうです。
Mさんはこうした状況について「(専門家でさえも)たぶん教え方がわからなかったり、教えても知的障害の子にわかるはずはないと思われていたのかもしれません」と話しました。
そして、続けて話した言葉がMさんと息子さんの成長を支える原動力になりました
「でも、親は何としてでも(わが子に)成長してほしいので、やらずに諦めることは納得できません」
傍観的でいられない、それが親の立場です。
幼児期の息子さんの状態は、「3歳過ぎても言葉はなく、反応も薄く、周りの同じぐらいの年頃の子にも興味がなく、一人で遊んでいるような子ども」でした。多動と奇声もありました。
Mさんはその現状とそれが「発達の遅れ」によるものだという現実をなんとか受け入れたものの、それに屈せず、少しでも課題を改善できる道を探し求めたのです。一般的な「障害を早く受け入れて、穏やかに過ごす」といった、「諦め」を前提にした「受け入れ」とは正反対の決断だったと言えます。
そして、親と子だけでは難しい学習についてその大切なポイントを過不足なく教えてくれる教室(エルベテーク)に出会い、学習が「発達の遅れ」の改善に及ぼす大きな影響力を実感しました(エルベテークでの学習は3歳〜中学3年生)。
息子さんの言葉が出るようなってからMさんが「宿題の内容を見て、息子にこんな力があるのか」と驚いた当時の気持ちについて体験発表で触れました。その時が親の役割にスイッチが入った瞬間ではなかったでしょうか。
さらに、「見過ごされていた力だったのではないか」とも振り返りましたが、学習開始から息子さんにいろいろなことができるようになっていく事実を間近で実感しました。それ以降、学校任せにするのではなく、家庭でも学習に力を入れ始めました。
こうして、コミュニケーションの未熟さがあるものの、小学校、中学校、高校での学習を通して、挨拶などの生活習慣や物事に取り組むまじめさ、忍耐力、我慢強さなどの基本的な力を習慣として身につけてきました。
その成果が現在の息子さんの姿ではないかと思われます。21歳になった彼は、都内の職場にJRと地下鉄を利用し1時間ほどかけて通勤し、毎朝7時に家を出て8時半から夕方の5時15分まで勤務しています。「体調不良などの欠勤は一度もなく、元気に出勤しております」とのことです。仕事は、事務補助、郵便物の仕分けと各部署への配送業務、パソコンでのデータ・名刺入力、資料作成などです。
「『挨拶は部署内で一番元気がいい』『指示を素直に聞いてくれるのでとてもスムーズに業務ができている』と上司から言われました」とMさんは語りました。
当初、上司との間を調整する役割のジョブコーチが、息子さんの作業の様子を観察し、作業内容や手順などが安定して取り組めるように支援してくれました。週に2回ほど約2時間の目安で関わっていたものの、やがて上司との話し合いを経てジョブコーチの支援は終了となりました。
仕事っぷりが認められ、現在、「常勤で……」という話も出ているそうです。
本当の配慮とは、子どもにとって必要なこうした力を、周りの大人が知恵を絞って工夫しながら早くから本人に身につけさせていくことではないでしょうか。
家庭と学校の協力が子どもを後押し
学齢期の息子さんは、障害児通園施設から小学校普通学級へ入学し、小学校3年生で転校して特別支援学級へ移り、中学校の特別支援学級、高校(単位制高校)へと進みました。
M君の幼児期からの成長を振り返る時、Mさんの決断・行動で素晴らしかったことは、親としての希望がなかなか通じないなか、ともすれば対立的になる愚かさにいち早く気づき、学校の教師と協力していく方向へ転換したことではないかと思われます。
そのMさんの決断・行動が状況を良い方向へと導いていったように思われます。
小学校と中学校で迎えた大きな転換期がそのことを端的に物語っています。小学校では、普通学級の授業についていけないため支援学級へ変わることを余儀なくされましたが、その小学校では離席する子どもが目立ち、それを注意・指導する先生が見当たりませんでした。そのため、Mさんは「ここで息子は成長できない」と判断し、別の小学校へ転校することを決めたのです。
「転校先の支援級に入ってからは先生と毎日連絡帳でやり取りをして、今まで甘えてきたことやしてはいけないこと、しなくてはいけないことなどの生活面をしっかり指導していただきました」とMさんは学校との協力関係、信頼関係の大切さに触れました。
しかし、新しい小学校へ移っても、かねてから要望していた交流授業のほうはなかなか実現しませんでした。やがて、担任も息子さんの読み書き計算の力があることを知り、その力を評価した結果、算数、国語、音楽、図工、体育、道徳などの授業とすべての学校行事を親学級のほうで受けられるように調整してくれました。息子さんの力が伸びたからこそ実現したことだと思われます。
中学校に進むと、入学前に数学、英語、美術、音楽、体育などの交流授業を約束してもらったはずなのに、なかなかその機会が訪れませんでした。そこで、Mさんは5月の定期試験を受けさせてもらえるよう、学校側にお願いしました。実際に受けてみると、数学は90点以上、英語は60点台、国語は50点台という成績を収めました。しかし、担任にはこの成績は何かの間違いであるかのように受け止められ、結局、7月の期末試験まで待つことになったのでした。
授業を受けていないにもかかわらずまた期末テストで同じように素晴らしい成績を上げたことを教科の先生などが評価し、夏休み直前にようやく交流授業が始まりました。そこから息子さんの中学校生活が大きく変わったのです。
特別支援教室の担任はパソコンを積極的に授業に取り入れていました。そして、パソコン部の顧問も兼ねていた関係で息子さんはパソコン部に入部。「息子が少しでも成長できるよう、先生のご配慮で中学2年生の時に副部長を経験させていただき、3年生の時は部長を経験させていただきました」とMさん。
高校入学にあたっては、就職を意識し、単位制高校を選択。電車通学しながら、試験前には家で5、6時間勉強しました。1年生の最初の前期試験で2教科追試になったものの、その後は卒業まで一度も再試験はなく、成績は上位だったそうです。漢検の2級とビジネス文書実務検定試験の1級も取得しました。「中学までにエルベテークで学んだ力がなければ、高校3年間での成長はなかったと思います」とMさんは振り返りました。
高校卒業後は、就職に関するスキルやビジネスマナーを学ぶために就労移行支援事業所に通い始めました。しかし、「就労移行」という名前とは裏腹に、企業実習の機会や就職活動への取り組みも見られませんでした。そこでエルベテークに相談に行くと、「就労移行支援事業所だけをあてにしていてはいけない。自分でハローワークに登録し、就職活動をするように」とのアドバイスを受けました。現在の職場で一般事務の求人募集があることも知り、すぐに応募し、書類選考と面接を経て合格しました。
理にかなったアドバイス
いっぽう、指導者の河野俊一さんからは、実際に指導に当たったからこそ知っている事実が次々に語られました。また、Mさんの言葉を適切にフォローし、参加者にとって理解しやすい内容にしてくれました。
特に、Mさんが息子さんの就職のことでエルベテークに相談に行き、その1ヶ月後に就職が決まった経緯について説明した言葉が記憶に残りました。
「就職のための面接の練習など、していないのであればそれは練習すればいいのであって、M君の場合、いまのこのような力をもっていたら相手のほうが『すごい子じゃないか』と、絶対そう思ってくれると確信しましたから、自分自身で就職活動することをお勧めしたわけです」
M君の力と課題を踏まえた、理にかなったアドバイスだったわけです。
また、河野さんから学習のスタート時点で重視したポイントについて次のような説明がありました。言葉の遅れがある子どもの保護者にとって参考になるのではないかと思われます。
「最初に指導したのは、目を合わせることと同時に口を閉じることを教えたわけなんです。言葉は出ていないのに口を閉じるとは何事だと思われるかもしれませんが、多くの子どもたちが口をぽかーんと開いている。開いているから独り言や無意味な音を出していると、私たちは長い指導の経験から思いますので、口を閉じることを教えました」
口を閉じることによって口の周りの筋肉に力を入れる効果も生まれ、それが発音・発語の力につながるとの事実を踏まえての指摘です。
不適切な状態を改めるために学習のスタートを早く切るに越したことはありません。その具体的な対策が「目を合わせること」と「口を閉じること」だというのです。
また、「発達の遅れ」をもつ子どもが勉強に取り組むことに対する社会の誤解にも河野さんは触れました。Mさんの息子さんが小学校から高校に至るまで毎日、家庭で長い時間を勉強にあてた事実を取り上げ、こう問題提起しました。
「『3時間4時間勉強している』と言ったら、一般の子どもならものすごくほめるのではないでしょうか。また、中高生なら『それは当たり前じゃないか』とも言うでしょう。でも、残念ながら、ハンディをもっている子どもがこんなに学習していると、よくないこととは言いませんが、(一般の子どもの場合と)何か違うようなとらえ方をする風潮を感じます」
この風潮が改まらない限り、「発達の遅れ」をもつ子どもの教育・学習はレベルアップしないのではないかと思われました。
さらに、社会人としての必要な力についても言及がありました。
「一般の子どもの場合、座して待っていて就職できるでしょうか。学校の紹介や推薦で就職するケースもありますが、こちらからいろいろ働きかけたうえで紹介や推薦してもらえるのであって、待っていたら学校から『君を推薦するからこの会社を受けてみないか』という話があるのはよほどの優等生以外ありえません。申し上げたいのは、力をつけないことには何も始まらないということです。
Mさんは、職場の中で先輩や上司の指示を聞いて、それだけで仕事を全部やっています。いまはジョブコーチもなしです。つまり、特別扱いではなく、まったく当たり前のように仕事をしているということです」
なお、体験発表の途中では、3歳上のお姉さん(同様に、エルベテークで学習)から息子さんやMさんへの思いが綴られた手紙が紹介されました。以下の通りです。
「私の弟が、普通の子とは違うとうすうす気づいたのは、弟が3歳の時だったと思います。
母が、その時、何に苦労しているかまでは、幼い私にはわかりませんでしたが、弟を想い必死に努力しているところを常々見ていました。そのため、小学生の頃は努力している母に迷惑はかけられないという想いとともに寂しい想いもいたしました。しかし、弟のことで悩むことも多い中、母は私の習い事の送り迎えや勉強の手伝いなどを尽くしてくれ、しっかりと愛情を感じていました。そんな母を一番にいまも尊敬しております。
また、まじめに努力をし、できることが徐々に増えていく弟が可愛くて仕方がありませんでした。私自身、エルベテークにいたことで勉強の仕方を学ぶことができましたし、学ぶことの楽しさを覚えました。植物観察をしたり、イラク戦争の時、書き損じの葉書を集め首相へ手紙を送るなど、他の塾とは違う面からも成長でき、とても感謝しております。
現在、私は実家を離れ就職しておりますが、週末に帰りますと、「お帰りなさい」と言って迎えてくれる弟がとても愛おしいです。うまく感情が伝えられないことでモヤモヤしたりイライラすることもあると思いますが、仕事でも甘えずに、コツコツ頑張って努力を続けられるまじめな弟をすばらしい子だと誇りに思っております。私自身頑張らないと、と励みにもなっております」
親子関係や家庭環境が垣間見える内容でした。共感・感動した参加者も少なくなかったようです。
保護者と教師の交流の場に
質疑応答の時間には、事前に申込書に書かれていた質問についてMさん、河野さんが答えました。たとえば、「私の息子も言葉が出ていません。どのように教えていけばいいのでしょうか?」など子育て全般の質問や、「就職にあたり伸ばすべき力はなんですか?」「就職にあたって企業から求められることはどんなことでしょうか?」など就職に関する質問です。
ところで、会場からの質疑応答の時間に興味深い質問がありました。中学校の特別支援学級の担任の方からの質問でした。要点をまとめれば、以下のようなやり取りが河野さんと参加者の間で行われました。
参加された教師の方「3歳の時、Mさんの息子さんを最初に教えていかれた時に『この子は伸びる』と言われたことがお母さまの支えになったというお話でした。個人的なことでほんとに申し訳ないんですけれども、発語がないお子さんに対し、エルベテークの皆さんはどんなことでその確証を得たのでしょうか? 『やっぱりこの子伸びるな』と、どんなところでお感じになったのかをお聞かせいただけたらと思います」
河野さん「やはり、現状を把握することだと思います。テストや発達検査をやればいいというわけではなく、実際に(具体的な作業をやらせてみて)何ができて何ができないのか、追求していかなければなりませんね。Mさんの息子さんが指導相談会という私どもの面談に最初においでになった時も、息子さんが教室に入室する様子から発音・発語の様子まで(言動や作業のすべて)を観察(指示と学習を通して、現状の言語面・認識面などの力と課題を確認)しました。時間は30分ぐらいですけれども、ほとんどの子どもの課題はそれでわかります。『こんなことができる』とお伝えすると、お母さんはびっくりする。そして、(家庭でも)目を合わせたり発音したりの練習をしていくと子どもが変わります。お母さんとしては楽しみですよね。手前味噌ですけれども、喜んで教室に通ってくる、一生懸命学習する。いい顔をして帰る、またいい顔をして家でも宿題をやる、そうなっていくんです。やはり、子どもの力を見極める、気づく、それが指導の始まりですね」
また、小学校・普通学級の先生からも質問がありました。
参加された教師の方「通常級をもっています。IQが110を上回るほど非常に学力は高い子(小学3年生)がいるんですが、いまお話があった、挨拶とかそういった基本的なものができない。忘れ物をしないとか、そういうことも取り組もうと思っているんですけれど、通常級としてはなかなか難しいところがあるんです。社会人になるうえで大切なことをどんな形で教えられのでしょうか?」
河野さん「さっき申し上げた、目を見るとか、応じるという練習を学校で先生方がやるのはなかなか難しいと思います。一度、その子のご両親とお話をされてみて、『挨拶、返事、受け入れる姿勢、応じる姿勢などの練習を学校でもしていくから、お家でも協力してもらえないだろうか』とお伝えしてみてはどうでしょうか。たとえば、朝起きた時の挨拶はどうか、食事の食べ方はどうか、宿題をやる姿勢はどうか、汚い字になっていないか。家庭でできることをいくつか挙げて、それを協力してもらう。学校では、授業を聞く時の姿勢に気をつけていく。IQが高くても、それを支える力がなければどうしようもありません。それだけの力があるんだったら、きちんと言い聞かせたら、わかる部分もあるかもしれませんし、場合によっては先生の目の前に座らせて気がついたらを注意するということも必要かもしれませんね。学校だけでそれをやっていくのは大変です。家庭の協力を得ることが大切だと思います」
こうしたやりとりを聞きながら当NPO法人として、保護者による長期的・具体的な体験発表を前提に、保護者、そして指導者と教師が意見交換できる場にしていけるのではないかと感じた次第です。
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前回に続き、今回も貴重な体験発表をしていただいたMさんに改めて感謝いたします。たくさんの参加者を前にして、「緊張しました」と率直におっしゃっていたMさんでした。
なお、セミナーに参加された保護者は、埼玉県を中心に、東京都、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県、長野県、新潟県、北海道の1都1道7県に在住の方々でした。お子さんの年齢は、下が5歳、6歳、上は大学生、20代という状況でした。
今回、テーマを「就職までのプロセス」としたこともあって、「高校までは順調にきたが、大学でトラブルを起こし、家にいる。就職のことが心配だ」「一度会社に就職したが、電車内でトラブルを起こし、いまは無職のままで、困っている」といった保護者や祖父母からの参加希望がありました。
適切な教育・学習を受けられないままに成長し、不登校や引きこもり、未就労、退職など、社会に適応できない若者が世の中に非常に多いという事実を突きつけられた思いがしました。
今回の体験発表が何かの参考になったら幸いです。
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【参考 体験発表の流れ】
(1)現在の様子 社会人2年目の生活(月〜金、毎朝7時前に出勤/真面目で穏やかな性格/仕事が好き/パソコン検定へ向けた勉強)
(2)幼児期の様子 発達上の課題(言葉がまったく出ず、奇声・独り言、周りに無関心などの発達の遅れ)、診断まで(母親から渡された本をきっかけに保健センターに相談/障害児通園施設に通う/知的遅れを伴う「広汎性発達障害」と診断/通園施設と療育の内容に不安/エルベテークとの出会いと成長/年長から幼稚園へ)
(3)学校生活 [小学校] 就学(就学相談、校長との面談を経て普通学級へ入学)、普通学級での様子(コミュニケーションがうまく取れず、読み書き・計算・学習態度など担任に理解してもらえない/幼児扱いを受け、態度や姿勢がくずれる)、家庭学習(3年から、転校して特別支援学級へ/「学習は必要ない」との担任の先生の考え方に危機感を感じ、いっそう家庭での取り組みに力を入れる)、周りの理解(少しずつ学校の協力を得て交流学習が増える) [中学校] 中学の特別支援学級(約束の交流学習がなかなか始まらず中間・期末テストを受ける/その結果、7月上旬より普通学級で数学・英語などの学習がようやく始まる)、パソコンとの出会い(パソコン部に入り、パソコンの検定をめざす) [高校] 単位制の高校(毎日登校し、8教科の授業/家でも一生懸命学習し、優秀な成績を得る)
(4)就職活動 就職の準備(就労支援施設に2年間の予定で入る/しかし、企業での実習や紹介などもなく、就職の見通しが立たない/エルベテークに相談)、アドバイス(エルベテークより「力をつけているから、自ら就職活動すべき」とハローワークへの登録を勧められる/現職場の求人を教えてもらい、応募)、職場の様子(上司と職場に恵まれる/常勤の話も)
(5)これまでを振り返って 姉のコメント(姉もエルベテークで学び、大学生の時に「小学生のころからエルベテークに通わせてもらい感謝している」と言ったこと/いまは「子どもができたらエルベテークに通わせる」)、家庭の様子(家族で話し合う機会が多い/これまでの学習や仕事への感想/エルベテークへの思い)、保護者の方に伝えたいこと(早めの適切な教育と周りに振り回されない方針が大切)
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【参考 アンケート】(全部で56通。その一部を原文のまま紹介します)
●保護者の体験発表についての感想-1「特にどの部分に共感されましたか?」の回答
・就学前の保護者の声
「幼児期から就労までの長期間にわたっての家族の視点からの実体験をお聞きする機会は本当にないので、話のすべてにおいて大変貴重でありがたい発表でした。ありがとうございました」(5歳の保護者)
「知的障害があったとしても教える学ぶ事ができるという事に心に響きました」(5歳の保護者)
・小学生の保護者の声
「親子共々、努力を積み重ねていること お姉様のお手紙、とても感動しました! がんばることが昇華なさったのだと胸があつくなりました」(小学1年生の保護者)
「いつも周りから子のできる範囲内でやらせないとかわいそうと言われて私自身とまどいがありました。どの子にもしっかり伸びしろがあることがあることを認識できたのがよかったです。私も子の成長をあきらめません」(小学5年生の保護者)
・中学生の保護者の声
「体験談を語って下さったMさんのいままでの経緯がとても今私が歩んでいる道と同じであったことにまず共感ができました。手さぐりの状態でやってきましたが、学習の習慣をつけて、子供の能力をのばしていったことがまちがっていなかったこと、そして一歩先を歩まれ、就職を継続されていることがなによりも今後の目標になった」(中学3年生の保護者)
・高校生の保護者の声
「学校の先生に理解・協力してもらうことが大事 対立せず保護者が感謝の気持ちを忘れずに子供の教育に一緒に取り組む姿勢が大事であることを感じました」(高校2年生の保護者)
●保護者の体験発表についての感想-2「『子育てや就職に役立ててみよう』と思ったことはなんですか?」の回答
・就学前の保護者の声
「本人を「特別な子供だ」とまず親が思わないこと、そして本人に実行させること、「就職に必要な力」などは、まさにそのくんれんの延長上にあるものだと感じた」(6歳の保護者)
・小学生の保護者の声
「自らアンテナをはり、行動すること 信頼できる先生方とつながる大切さ」(小学5年生の保護者)
・中学生の保護者の声
「パソコンなどのスキルを身に付ける 就労支援施設ばかりに頼らない 自分で就職に向けた行動をする」(中学1年生の保護者)
・高校生の保護者の声
「あきらめずに情報を集め、行動する事」(高校1年生の保護者)
●保護者の体験発表についての感想-3「その他、今回の体験発表で感じたことをお書きください」の回答
・就学前の保護者の声
「はっきりいって、自分の子供がこれからどのような人生・将来を歩んでいくのか非常に不安です。今回のような、発達障害の子供がどのような人生を歩んできたのか、親がどのような教育をしてきたのか聞ける機会は貴重で、大変勉強になりました」(5歳の保護者)
・小学生の保護者の声
「学校との対応 先生方とのかかわりについて、「自分が先生だったら」という立場になってできることを考えておねがい等していくというお話が参考になりましたので、今後生かしていきたいです」(小学3年生の保護者)
・中学生の保護者の声
「Mさんの娘さんのメッセージに感動しました」(中学2年生の保護者)
・高校生の保護者の声
「これから就職にあたっての目標が少しみえてきました」(高校3年生の保護者)
●河野さんの解説についての感想
「優しいお人柄が伝わり、安心できました。あきらめないことや、学習、人に従う練習が大事なのだと伝わった気がします」(5歳の保護者)
「お母様のお話にご指導された立場として具体的なことを説明して下さいました。わかりやすかったし、おもしろい、とすら感じた時間でした。本当にありがとうございました」(6歳の保護者)
「「教育は、自分の好きなことから、他や外へ目を向けるように教えるもの」 自分の子だけでなく、自分にもあてはまると実感しました。子供達の未来に必要なことをしっかり説明して下さいました」(中学2年生の保護者)
「「子供が上達することが最優先」とても印象に残りました」(高校1年生の保護者)
「学習面の話から入られたので、息子とは違う話だと思っておりましたが、あたりまえのことができるように教えなければならないというところでハッとしました。今、23才まで来てしまっていますが、息子と共に頑張っていこうと私自身の考え方を変えていただきました」(大学4年生の保護者)
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次回■第15回
・テーマ
「この子と会話することは一生ないでしょう」、
その子が高校受験をめざす
(言葉・コミュニケーションの遅れ、多動への対処法)
・お話(体験発表) 中学2年生の母親
・進行と解説 河野俊一さん(エルベテーク代表/医療法人エルベ理事)
・3月16日(土) 10:00〜12:00 メディアセブン/コミュニケーションスタジオ(川口市川口1-1-1キュポ・ラ7階)
・定員 30名(保護者、学校の教師) ・参加費 800円(資料代等)
(報告/2019年1月10日 知覧)
(撮影 堀)