3月10日(土)、連続セミナー[わが子の「発達の遅れ」、その改善に取り組む保護者たち]第9回(後援/埼玉県、埼玉県教育委員会、川口市、川口市教育委会)を開催しました。
2018年最初となった連続セミナー第9回は、「発達の遅れ」を乗り越えた高校2年生の母親による体験発表でした。学習を中心に置いた10年以上にわたる子育ての手応えを十分に感じさせる、説得力ある話が聞かれました。
現在、公立高校2年生になる松本さんの息子さんは、年中の時に「高機能自閉症」、就学前には「広汎性発達障害」「多動性障害」と診断され、特別支援学級への入学を勧められました。両親は「普通学級で様子をみてほしい」と強く希望。しかし、1学期の終わりに担任から「2学期には特別支援学級へ移るように」と言われてしまいました。
「どうにかしなくては」と、解決策を求めた両親。エルベテークの本がきっかけとなり、わが子に学習の基本から繰り返し学ばせました。すると、1年生の夏休み明けの2学期、担任から「夏休みになにかありましたか?」と聞かれるほどの変化が現れました。その後、学習に取り組む姿勢・態度と基礎学力の向上とともに、松本君自ら「繰り返しやればできる」と学習の手応えを感じるまでに。
現在、文科系の大学を志望する、明るく誠実で成績優秀な高校2年生。自分で学習の計画を立て実行する習慣が基盤にあります。家庭学習を生活の中心に置くことによって、松本君は周りが驚くほどの自信と力をつけています。「発達の遅れ」を乗り越えたと言ってよいでしょう。
セミナーでは、幼児期における親の不安や悩み、学校生活(特に小学校生活)のポイントとエピソード、子育てにおける教育・学習の意義、そして現在の様子などについて母親ならびに保育士の立場から詳しく話してもらいました。
興味深い話がいくつもありました。たとえば、松本さんが息子さんの現在の力・成績について触れた際、「飛び抜けてできる科目はないけれど、飛び抜けて悪い科目もない」という趣旨の話をされました。
専門家やマスコミなどが「発達の遅れ」を話題にする時、とかく「異能」といった特別な才能・個性が重視されがちですが、実は子どもにとって大切なのはむしろ総合力ではないか、そんな指摘が込められていたように感じました。
実際、子どもの成長の過程でどのような状況・条件がやってきたとしてもそれに対応できるのは本人に総合力があるかないかだと思われます。言い換えれば、総合力とは対応力といってよい優れた力です。事実、松本さんの息子さんは大きく成績が崩れることなく、常に上位に位置しながら高校生活を送っています。この力は社会人となった時にもきっと力を発揮するだろうと思います。
実績を通した得た松本さんの指摘は淡々とした中にも力強さを感じさせてくれました。
学習の進め方について、「書ければいい」と「きちんと書く」の違いを対比して話されたのも印象的でした。誰もが認めざるをえないたしかな成長を約束するのは、特別で目新しい学習内容ではなく、むしろ当たり前のことに取り組ませ、それを親や大人がしっかり確認する、できていなければ曖昧にせずまた取り組ませる、やり遂げさせる、そんな親の姿勢・考え方が大切なのだと改めて感じました。
特別支援教育の現場を見ると、残念ながら、漫然と子どもにプリントや作業をやらせ、友達感覚で「できたね」「すごいね」と周りが声をかけてそれで済ますといった対応が少なくないように感じられます。本当に本人の力がつくのだろうかといつも疑問に感じます。
それだけに、学習の場でも家庭でも、手を抜かずに押さえるところはしっかり押さえて対応した松本さんの姿勢と努力があったからこそ、息子さんはここまで伸びたのだなと確信しました。
読み書き計算などの基礎的な学習を通し、学習をはじめ生活面のさまざまなものに一人で取り組む力を養うことにつながったとの松本さんの指摘。そこに、親としての自信(同時に、子どもの自信)がうかがえました。
セミナー後のアンケートでも、「共感したこと」として「子どもの教育には親の姿勢が大切」「あきらめない」「子どもとの接し方」「基本的なこと、当たり前のことを自然とできるようにさせたこと」、また「自分の子育てに役立てたいこと」として「生活習慣の見直し」「生活や学習の自立」「人の話をしっかり聞く習慣、自分のものは自分で片付ける習慣などを身につけさせたい」を挙げる方が多かったようです。
参加された方が「親の接し方が変われば、子どもは伸びる」という事実に着目しながら自らの子育てを見直し、貴重な実例(体験発表)から多くを学ばれることを願っています。
なお、今回参加申し込みの保護者は、川口市を中心に埼玉県、東京都、神奈川県、千葉県、栃木県の5県に在住の方々でした。お子さんの年齢は、下が3歳、上は中学3年生でした。
ご夫婦での参加希望もたくさんありましたが、定員の関係で1名限定という形をとらせてもらいました。ご理解・ご協力ありがとうございました。
[テーマ] 「大人の接し方が変われば、子どもは伸びる」
[プログラム] 体験発表(高校2年生の母親/保育士) + 進行・解説・質疑応答(エルベテーク代表/医療法人エルベ理事・河野俊一さん)
[日時] 3月10日(土) 10:00〜12:00(受付開始9:40〜)
[会場] メディアセブン コミュニケーションスタジオ(川口駅東口「キュポ・ラ」7階 048-227-7622 http://www.mediaseven.jp/)
[定員] 30名(対象=保護者)
[参加費] 500円
*詳細は、近日中に報告します。